柔道整復師は骨折や打撲、捻挫、脱臼といった外傷に対する施術を行い、人間の自然治癒力を活かして回復をサポートする職業です。ケガの回復後のリハビリを担当できたり、緊急時には医師の指示がなくても骨折や脱臼の応急処置が行えたり、スポーツの現場でのコンディショニングや介護分野では高齢者の機能訓練など、多くの役割を持つ仕事として需要が高まっています。

そのような柔道整復師になる際には「管理柔道整復師」を目指すことも考えられます。管理柔道整復師になることで柔道整復師としてできることが増えるため、さまざまな将来を想定できるようになるでしょう。

本記事では管理柔道整復師の概要と、目指す方法について解説します。

管理柔道整復師とは?

管理柔道整復師とは、柔道整復師が接骨院・整骨院を開業した際に、その施設の代表として医療費の請求を行うことができる資格・職種です。管理柔道整復師の資格を持っていないと、接骨院・整骨院で施術をした際に健康保険の適用を受けられず、患者さんが費用を負担する割合が増えてしまいます。管理柔道整復師を施設に置くことで健康保険の適用および健康保険組合への医療費請求が行えるため、一般的な病院と同じシステムで接骨院・整骨院を運営できるようになるのです。

健康保険が使えないと患者さんの費用負担が増えるため、接骨院・整骨院にとって管理柔道整復師はなくてはならない存在だと言えるでしょう。

管理柔道整復師と施術管理者について

管理柔道整復師は、施術管理者とも呼ばれます。管理柔道整復師の研修プログラムを提供している「公益財団法人 柔道整復研修試験財団」では、「施術管理者」という言葉が使われています。

一方で接骨院・整骨院の求人などでは、管理柔道整復師の名称を使って募集が行われているケースもあります。特別な理由を持って管理柔道整復師と施術管理者を分けていることはほとんどないため、2つの言葉は同じ意味を持つと考えて良いでしょう。

管理柔道整復師になるメリット

管理柔道整復師になることには、さまざまなメリットがあります。以下を参考に、管理柔道整復師になるメリットを具体的に把握しておきましょう。

柔道整復師として就職できる可能性が高まる

管理柔道整復師になっておくことで、柔道整復師としての就職はもちろんキャリアアップの可能性が高まります。通常の柔道整復師と違い、管理柔道整復師は接骨院・整骨院の代表として医療費の請求が行えるため、職場によっては即座に必要とされる人材になり得るでしょう。給与面ではプラスアルファの手当てがついたり、院長などといった責任ある立場に就く可能性が高まるため、将来のキャリアアップや転職を考えて管理柔道整復師を目指すのがおすすめです。

現在の職場での昇給につながる

管理柔道整復師になることは、現在の職場で昇給や昇格するきっかけになり得る点もメリットです。整骨院・接骨院で健康保険を請求するには、最低でも1人の管理柔道整復師が必要となります。万が一それまでその施設を代表していた管理柔道整復師が辞めてしまった場合、新しい管理柔道整復師を雇うまで施術に健康保険が適用できなくなるのです。

そのため接骨院・整骨院では、複数名の管理柔道整復師を確保して、万が一の退職や休職に備えるケースがあります。その際、外部から新規で管理柔道整復師を雇用することもありますが、既存の柔道整復師に管理柔道整復師になることを促すことも珍しくありません。管理柔道整復師になることで昇給・昇格の可能性があるのなら、上記で解説した就職・転職がしやすくなる点も踏まえて、積極的にチャレンジしていくのがおすすめです。

独立開業する際に役立つ

柔道整復師の国家資格には、開業権があります。開業に必要な準備ができれば、自分の接骨院・整骨院を新たにつくることができるのです。独立開業の際にも、管理柔道整復師を配置して健康保険の適用を受けられるようにしなければなりません。開業を行う自分自身が管理柔道整復師になっていれば、施設の代表として常に健康保険の請求が行えるようになるため、その後の経営がスムーズに行えるメリットがあります。

柔道整復師は、既存の接骨院・整骨院、病院、介護福祉施設、スポーツ業界などさまざまな就職先に加えて、独立開業という選択も取れる魅力的な職業です。この機会に将来的に自分で独立開業を行うことを目指して、管理柔道整復師になることも検討してみてはいかがでしょうか。

管理柔道整復師を目指す方法

管理柔道整復師になるには、柔道整復師の国家資格の取得に加えて、「実務経験」と「施術管理者研修の受講」が条件となっています。かつて国家試験の取得のみが条件でしたが、2018年4月以降は2つのプロセスが必要になっています。これから管理柔道整復師を目指す場合には、柔道整復師としての実務経験と専用の研修を受講する必要がある点に注意しておきましょう。

以下では、管理柔道整復師を目指す際の「実務経験」と「施術管理者研修の受講」について詳しく解説します。

管理柔道整復師を目指すには2〜3年の実務経験が必要

管理柔道整復師になるには、柔道整復師として2〜3年の実務経験が必要です。必要な実務経験の年数は管理柔道整復師の届出を行うタイミングによって異なり、具体的には以下のようになっています。

  • 2022年4月〜2024年3月までに届け出る場合:2年間の実務経験が必要
  • 2024年4月以降に届け出る場合:3年間の実務経験が必要

上記を参考に、管理柔道整復師になるために自分が何年間の実務経験が必要になるのか確認しておきましょう。また、2022年4月からは柔道整復師として保険医療機関で働いた期間も実務経験として認定されます。ただし、最低1年間は接骨院・整骨院など施術所での実務経験が必要です。

施術管理者研修を受講する

管理柔道整復師の認定を受けるには、公益財団法人 柔道整復研修試験財団が主催する施術管理者研修を受講しなければなりません。研修は管理柔道整復師になるためだけでなく、適切に柔道整復療養費の支給申請が行えるようになることや、質の高い施術が提供できるようになることも目的とされています。

研修は土・日および祝日を使い、連続2日間で合計16時間の学習を行います。研修費用は約20.000円が必要になり、昨今は社会情勢を考慮してオンラインによる研修も実施されています。

研修の受講を終えると「施術管理者研修修了証」が発行されます。有効期間は研修終了の年月日から5年となっているため、事前に確認しておきましょう。

まとめ

管理柔道整復師になるには、これまで紹介したプロセスが必要です。詳細を確認して、管理柔道整復師になるためのスケジュールを早めに立てておくと良いでしょう。

管理柔道整復師は、柔道整復師が働く接骨院・整骨院に欠かせない存在です。管理柔道整復師になっておくことで、柔道整復師としての自分の価値がさらに高まるため、就職・転職が有利になるでしょう。もちろん自分自身で独立開業を行う際にも役立ちます。この機会に管理柔道整復師になることを検討してみてはいかがでしょうか。

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