医療現場の主流である「西洋医学」は、明治時代に近代医療として日本に導入されました。そのため、「東洋医学」と呼ばれる古代中国や日本で発展した伝統的医学の考え方は「古い医学」といった印象をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、近頃は「未病」や「自然治癒力」などの言葉に代表される東洋医学の考え方や、西洋医学と東洋医学の両方を用いた「統合医療」に関心が集まっています。そのため、西洋医学と東洋医学の知見をあわせて医療の現場に携わる鍼灸師・あん摩マッサージ指圧師・柔道整復師等に寄せられる期待は高まっており、東洋医学を学べる学校が注目されています。

東洋医学の将来性は?東洋医学を学べる学校について

東洋医学と西洋医学が融合した「統合医療」とは

現在の日本は超高齢社会(65歳以上の人口が全人口の21%以上を占める社会)に突入し、また、自然災害や生活環境の変化により多様化した疾患、高齢化によるがんなどの難治性疾病の増加により、東洋医学が得意とする予防医学の重要性が認知されるようになりました。それにより漢方薬をはじめ、鍼灸やあん摩マッサージ指圧、柔道整復等に代表される伝統医療と現代医療を融合させた統合医療が注目されています。

統合医療は、西洋医学のエビデンス(根拠)に基づいた疾患に対する治療を試みるだけではなく、東洋医学の考え方で身体の自然治癒力を高め、原因が分からない症状や身体全体の調不調についても診ることが可能であると言えます。また、東洋医学は体質の改善や健康増進、さらに豊かな老後を送るために健康寿命を延ばす「アクティブ・エイジング(=生活の質を低下させることなく、社会参加を続けながら、年を重ねていくこと)」にも一定の成果をあげていることから、統合医療は今後ますます医療の現場で重要視されていくことでしょう。

「東洋医学」を学べる四年制大学と専門学校の違いは

東洋医学は主に医療系の大学や専門学校で学ぶことができますが、国家資格取得までの期間や費用、カリキュラムなどに違いがあります。

4年間の修学が必要な大学に対し、専門学校では3年間で国家資格を取得し、医療の現場ですぐに活躍するための実践的な学習をします。大学では一般教養科目からスタートし、東洋医学と西洋医学の両面から幅広い知識や理論、学術的内容を学んでいきますが、専門学校のカリキュラムでは、身体の構造や仕組みの基本から応用までを専門基礎科目として学び、同時に専門科目でそれぞれの資格に特化した東洋医学を学びます。また、早い時期から実践力を高めるための授業や医療機関と密接に連携した臨床実習を通して、知識が無理なく深く身につくよう組まれています。

授業は2時限~4時限と集中して行われ、各自で復習する時間や補習・学習サポートにより学生個々の習熟度に合わせた指導時間も十分に確保されており、確かな実力を養えます。また、高校を卒業してすぐの方から、会社勤めの社会人の方まで多種多様な学生ニーズに応えられるよう、夜間コースが設置されている学校があることも専門学校の大きな特長です。

経済面においては、大学よりも短期間のため学費を抑えられ、1年早く国家資格を取得できます。また、厚生労働省の専門実践教育訓練給付金や各種の学費優遇制度、および夜間コースだけの就学支援制度など学費面で多くの支援があります。

「東洋医学」を学んだ人の進路と就職先

卒業後の就職先としては、「あん摩マッサージ指圧師」「はり師」「きゅう師」「柔道整復師」などの国家資格を活かし、鍼灸院・接骨院をはじめ病院・クリニックなどの医療機関への就職が挙げられます。最近では在宅医療や介護福祉施設での機能訓練指導員としての勤務、スポーツジム、プロ・実業団チームなどのスポーツトレーナー、美容・エステ分野への進出など、活躍の分野も多方面にわたるようになりました。中には、国家資格を取得後すぐに鍼灸院や接骨院などを開業する方もいます。

その他に、幅広い疾患に対応できる治療家になるために、プラスαの資格取得を目指す方、奥の深い東洋医学の臨床力を極めるため、また臨床指導者を目指すために教員養成課程に進む方もいます。
また、3年間の専門学校で修得した単位を活かし大学に編入することで、大卒資格(学士)取得を目指す選択肢もあります。

「東洋医学」の学校を卒業することの意味と将来性

近年、東洋医学は科学的な研究のもと有効性が 世界保健機関(World Health Organization:WHO)より認められ、地域の風土にあった医療として世界中から注目を集めています。また、原因不明な体調不良のケアや、自然災害の被災地等における救護活動、医療資源の少ない地域などにも、特別な機材や場所を問わない東洋医学的施術に期待する声が高まっています。さらにストレス社会における癒しやリラクゼーションのニーズにも応えることができる東洋医学は、医療・介護福祉からスポーツ・美容・エステ・癒しの分野まで幅広く貢献しています。

東洋医学が実践する自然治癒力を高めていく治療や患者さんに合わせた施術方法のさらなる発展と次世代への継承は、国民の保健衛生の将来を担う医療人にとって重要なテーマです。東洋医学のスペシャリストを目指すことは、これからも有望な選択肢であると言えます。